エンジニアのベンチャー転職|年収と働き方を求人7,800件で比べた
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ベンチャー企業への転職を考えるとき、気になるのはたいてい2つです。年収は下がるのかと、働き方はきつくなるのか。「大手より給料が安い」「人が少ないから残業が多い」という話はよく聞きますが、どれも誰かの体験で、求人全体で見るとどうなのかは分かりにくいところです。
そこで、レバテックダイレクトの募集中の正社員求人7,800件を、「ベンチャー企業」のタグが付いているかどうかで分けて数えました(2026年10月16日)。タグありは2,253件、タグなしは5,547件です。
結果は、通説と少し違う形でした。年収レンジの下限はほぼ同じで、上限はベンチャーのほうが高い。職種を揃えても、14職種中13職種で上限1,000万円以上の求人の割合がベンチャーのほうが高くなりました。一方で「残業月20時間未満」の条件はほとんど差がなく、「副業可」「新規立ち上げ」の条件はベンチャーのほうがはっきり多く付いていました。
この記事の対象は、実務経験があり、ベンチャーへの転職を考えているITエンジニアです。ベンチャーが良いか悪いかを決める記事ではありません。求人の数字で通説を確かめ、応募前に何を聞けばよいかを書きます。
正社員求人の3割に「ベンチャー企業」のタグが付いている
レバテックダイレクトでは、求人に「ベンチャー企業」「上場企業」「自社サービスあり」などのタグが付いています。募集中の正社員求人7,800件のうち、「ベンチャー企業」のタグが付いた求人は2,253件で、28.9%でした。求人を出している会社は602社です。
このタグは企業が自分で付けるもので、設立から何年以内、従業員が何人以下といった定義はありません。設立数年の会社もあれば、従業員数百人規模で成長を続けている会社もあります。実際、タグありの求人のうち217件には「上場企業」のタグも付いていました。とはいえ、上場企業のタグが付いた求人の割合はタグありが9.6%、タグなしが21.3%で、全体としては上場前の会社が中心です。この記事でいう「ベンチャー」は、企業が自分をベンチャーだと名乗っている求人のことです。
タグありの求人は、職種の偏りも小さくありません。多いのはシステムエンジニア528件、サーバーサイドエンジニア380件、プロジェクトマネージャー281件、フルスタックエンジニア248件で、Webサービスを作る職種の比率が高めです。全体を比べるだけだと、職種の違いが年収の差に混ざります。そのため、次の節では全体の比較に続けて、職種を揃えた比較をします。
年収の下限はほぼ同じで、上限が高い
まず全体で比べます。求人票の年収レンジの下限と上限を、タグの有無で並べました。
| 区分 | 正社員求人 | 下限の中央値 | 上限の中央値 | 下限600万円以上 | 上限1,000万円以上 |
|---|---|---|---|---|---|
| 「ベンチャー企業」タグあり | 2,253件 | 500万円 | 850万円 | 36.0% | 40.7% |
| タグなし | 5,547件 | 480万円 | 800万円 | 24.4% | 25.9% |
下限の中央値は500万円と480万円で、20万円しか違いません。差が大きいのは上側で、上限が1,000万円以上の求人はタグありが40.7%、タグなしが25.9%でした。下限が400万円以下の求人も、タグありが27.9%、タグなしが30.5%で、ベンチャーのほうが低い側に寄っているわけではありません。
つまり、ベンチャーの求人は年収レンジの幅が広いということです。入口の年収は大きく変わらず、評価次第で上に伸びる余地が大きく書かれています。「ベンチャーは年収が下がる」という印象は、少なくとも求人票の年収レンジでは確かめられませんでした。
職種を揃えても、上限が高い傾向は崩れない
ベンチャーにはフルスタックやサーバーサイドのように年収の高い職種が多いので、全体で比べると高く出るのは当然とも言えます。そこで、タグありの求人が30件以上ある14職種について、職種ごとに上限1,000万円以上の割合を比べました。

14職種中13職種で、ベンチャーの求人のほうが上限1,000万円以上の割合が高くなりました。差が大きいのはシステムエンジニア(32.6%と18.0%)、インフラエンジニア(36.0%と19.7%)、プログラマ(28.7%と8.5%)です。下回ったのはITコンサル(62.3%と65.9%)だけでした。
一方、職種ごとの下限の中央値はほとんど同じです。システムエンジニアは450万円と450万円、プロジェクトマネージャーは600万円と600万円、サーバーサイドエンジニアは500万円と496.5万円でした。下限600万円以上の割合はベンチャーのほうが高い職種が14職種中11ありますが、差は上限ほど大きくありません。
職種を揃えても、形は全体と同じです。入口は同じ、上限が高い。条件を変える転職で年収がどう動くかの全体像は転職で年収が下がる条件を求人で数えた記事で扱っており、そこでも「自社サービスあり」の求人は下限が上がる側でした。ベンチャーの求人の60.9%には「自社サービスあり」のタグも付いています。
残業の条件は変わらず、副業と新規立ち上げが多い
次に働き方です。求人に付いた条件の割合を、タグの有無で比べました。

「残業月20時間未満」はタグありが54.7%、タグなしが55.2%で、ほぼ同じでした。職種を揃えても、ベンチャーのほうが低いのは14職種中8職種で、残りの6職種ではベンチャーのほうが高くなっています。「ベンチャーだから残業が多い」とも「少ない」とも言えない、というのが求人の条件から言えることです。職種ごとの残業の条件は残業の少ない求人を職種別に数えた記事にまとめています。
はっきり違うのは3つです。「副業可」は50.6%と26.8%でほぼ2倍、「新規立ち上げ」は35.1%と10.0%で3倍以上、「フレックス制度あり」は46.9%と36.3%でした。副業可の割合は、14職種すべてでベンチャーのほうが高くなっています。新しい事業を立ち上げる仕事が多く、働く時間や副業の自由度を条件として出している会社が多い、という姿です。新規立ち上げの仕事は決まった手順が無い分、担当の範囲が広くなりがちで、設計から運用までを少人数で受け持つこともあります。これを経験の幅と見るか負担と見るかで、向き不向きが分かれます。
「裁量労働制あり」も14.6%と9.7%で、ベンチャーのほうが多めです。裁量労働制は、実際に働いた時間ではなく、あらかじめ決めた時間を働いたものとみなす制度です。対象になる業務は法律で決まっていますが、働く時間の長さがそのまま給与に反映されない点は、残業代がどう払われるかと合わせて確かめておく必要があります。
ストックオプションは1割に満たない
ベンチャーへの転職でよく話に出るのがストックオプションです。会社が成長すれば、年収とは別に大きな報酬になる可能性があります。ただ、「ストックオプションあり」のタグが付いていたのは、ベンチャーの求人の9.4%でした。タグなしの3.4%よりは多いものの、10件に1件もありません。
また、ストックオプションは付与されても、行使できる時期や条件、会社が上場や売却に至るかどうかで価値が大きく変わります。ストックオプションを前提に、いまの年収を下げて移る判断はしないほうが安全です。年収はあくまで年収レンジの中で決め、ストックオプションは「あれば上乗せ」と考えるほうが、後で計算が狂いません。
ベンチャーの求人は東京に集中している
働き方の条件とは別に、勤務地の偏りがありました。主な勤務地が東京都の求人は、タグありが85.1%、タグなしが68.2%です。ベンチャーの求人は、もともと東京に多い求人全体よりも、さらに東京に寄っています。
地方に住んだままベンチャーで働きたい場合は、選べる数がかなり限られます。地元の求人の数とフルリモートの求人の考え方は地方在住エンジニアが選べる求人を47都道府県で数えた記事で扱っています。
年収レンジの幅が広いことを、どう読むか
上限が高いことは、そのまま「ベンチャーに行けば年収が上がる」という意味ではありません。年収レンジの幅が広いということは、同じ求人でも、提示される額が人によって大きく違うということです。経験が求人の中心に合っていれば上側で、合っていなければ下側で提示されます。
また、ベンチャーは人事制度が整い切っていない会社も多く、入社後の昇給の決まり方が会社ごとに違います。入社時の提示額と、その後どう上がるかは別の話です。提示額の交渉の進め方はエンジニアの年収交渉の進め方にまとめているので、レンジの幅が広い求人ほど、交渉の準備をしてから面接に進んでください。
ベンチャーの求人で、応募前に確かめること
ここまでの数字を、応募前の確認項目に直します。左が通説、中央が求人の数字、右が確かめることです。
| よく聞く話 | 求人の数字 | 確かめること |
|---|---|---|
| 年収が下がる | 下限はほぼ同じ(500万円と480万円)、上限1,000万円以上は40.7%と25.9% | 年収レンジのどこで提示されるか、昇給の決まり方と評価の時期 |
| 残業が多い | 「残業月20時間未満」は54.7%と55.2%でほぼ同じ | 直近数か月の平均残業、繁忙期、裁量労働制かどうかと残業代の扱い |
| 自由に働ける | 副業可50.6%と26.8%、フレックス46.9%と36.3% | 副業の申請の要否と範囲、フレックスのコアタイム |
| ストックオプションで報われる | 「ストックオプションあり」は9.4% | 付与の有無・量・行使の条件。年収の判断には入れない |
| 新しいことができる | 「新規立ち上げ」35.1%と10.0%、「新技術に積極的」68.8%と53.7% | 担当するのが新規事業か既存事業か、チームの人数 |
この中で、求人票だけでは分からないことが多いのが「事業の段階」です。資金調達を終えたばかりで採用を広げている会社と、黒字化して落ち着いてきた会社とでは、同じベンチャーでも仕事の量も評価の仕組みも違います。直近の資金調達や事業の状況、エンジニアの人数がこの1年でどう変わったかは、面接で直接聞いてかまいません。
面接で聞くと、入社後の姿が見える質問
ベンチャーの面接では、現場のエンジニアや経営に近い人が面接官になることが多くあります。上の表の「確かめること」は、具体的な場面を聞く形にすると答えが返ってきやすくなります。
- 「この1年で、エンジニアは何人から何人になりましたか」。増え方が急なら採用と立ち上げの仕事が多く、横ばいなら既存の仕事を回す比重が大きいと分かります
- 「同じ職種で入った人は、入社後どのくらいで年収が変わりましたか」。年収レンジの上限が、実際にどこまで使われているかの手がかりになります
- 「直近で一番忙しかった時期は、いつ、何が理由でしたか」。リリース前の集中なのか、慢性的な人手不足なのかで、残業の性質が違います
- 「副業はどんな内容なら認めていますか。申請は要りますか」。「副業可」の範囲は会社ごとに大きく違います
- 「ストックオプションは、どの職位から、どんな条件で付与していますか」。答えが曖昧なら、年収の判断から外しておくのが安全です
どの質問も、答えの良し悪しを決めるためのものではありません。自分が望む働き方と、その会社がいま置かれている段階が合っているかを確かめるための質問です。合っていなければ、その時点で候補から外すほうが、入社後に気づくより負担が小さく済みます。
ベンチャーの求人を探す順番
ここまでを、探す順番に並べ直します。転職活動全体の流れはエンジニアの転職の進め方にあるので、ここではベンチャーを選ぶときに固有の部分だけを書きます。
- いまの職種のまま、ベンチャーの求人がどれくらいあるかを見る。「ベンチャー企業」のタグと職種を重ねると、移れる候補の数が分かります
- 年収レンジの上限ではなく、下限といまの年収を並べる。上限は評価次第の数字です。下限がいまの年収を下回る求人は、提示額が下がる可能性があります
- 働き方の条件はタグで絞り、面接で確かめる。副業やフレックスはタグで絞れます。残業と裁量労働制の扱いは面接で聞きます
- 事業の段階を聞く。資金調達の時期、黒字かどうか、エンジニアの人数の推移を聞くと、入社後の働き方の見当がつきます
- ストックオプションは最後に確認する。あれば上乗せと考え、年収の判断には入れません
いまSIerや受託開発の会社にいて、自社サービスを持つ会社に移りたい場合は、ベンチャーかどうかより先に、業種で受託と自社開発を分けて見るほうが早いことがあります。SIerから自社開発へ移るときの求人を職種別に数えた記事も比べてみてください。
この数え方の限界
「ベンチャー企業」のタグは、企業が自分で付けるものです。設立年数や従業員数、資金調達の状況による定義はありません。タグを付けていないベンチャーもあれば、規模の大きい会社がタグを付けていることもあります。この記事の数字は、ベンチャーを名乗る求人とそれ以外の求人の違いであって、ベンチャー企業全体の実態を測ったものではありません。
また、年収は求人票の年収レンジで、内定で提示された額ではありません。残業や副業などの条件も求人に付いたタグで、実際の働き方を測ったものではありません。1社の求人検索のデータであり、市場全体の比率ではない点に注意してください。職種別の比較は、タグありの求人が30件以上ある14職種に限っています。1件の求人に複数の職種が書かれていることがあり、その場合は同じ求人を複数の職種で数えています。
この進め方が向かない人
- 実務経験がまだない人。「実務未経験歓迎」の条件が付いた求人は、ベンチャーでも5.7%でした。少人数の会社では育成より即戦力の採用が中心になりやすく、未経験から入る道としては細いです
- 地方に住んだまま働きたい人。ベンチャーの求人の85.1%は主な勤務地が東京都です。地元で探すなら、ベンチャーという条件を外して件数を見るほうが現実的です
- 入社時の年収を上げることを最優先にする人。下限はほぼ同じなので、入社時に上がるかどうかは提示額しだいです。上限の高さは、入社後の評価で伸びる余地として見てください
- 決まった仕事の範囲で働きたい人。新規立ち上げの求人が多く、担当範囲が広がりやすい環境です。役割が明確に決まっている会社を望むなら、大手や上場企業の求人と並べて比べてください
よくある質問
ベンチャーに転職すると年収は下がりますか
求人票の年収レンジで見る限り、下がる方向ではありませんでした。年収の下限の中央値は「ベンチャー企業」タグありが500万円、なしが480万円でほぼ同じで、上限1,000万円以上の求人は40.7%と25.9%でタグありのほうが多くなっています。ただし提示額はレンジの中で人によって違うので、下限といまの年収を並べて確かめてください。
ベンチャーは残業が多いですか
求人の条件では差がありませんでした。「残業月20時間未満」の条件が付いた求人は、タグありが54.7%、なしが55.2%です。職種を揃えても、ベンチャーのほうが低い職種と高い職種がほぼ半々でした。実際の残業時間は会社ごとに違うので、面接で直近の平均を聞いてください。
ストックオプションはもらえますか
もらえる求人は多くありません。「ストックオプションあり」のタグが付いていたのは、ベンチャーの求人の9.4%でした。付与されても、行使の条件や会社の将来で価値が大きく変わるので、年収を判断する材料には入れないほうが安全です。
ベンチャーでは副業ができますか
できる求人の割合は高めです。「副業可」の条件が付いていたのは、ベンチャーの求人の50.6%で、それ以外の26.8%のほぼ2倍でした。職種を揃えても、14職種すべてでベンチャーのほうが高くなっています。申請が要るか、どこまで認めるかは会社ごとに違うので、規定を確かめてください。
大手からベンチャーに移るとき、何に気をつければよいですか
年収の上限より下限を見ることと、事業の段階を聞くことです。ベンチャーの求人は年収レンジの幅が広く、入社時の提示はレンジの中で決まります。また、資金調達の時期や黒字かどうかで、仕事の量や評価の仕組みが変わります。この2つを面接で確かめておくと、入社後のずれが小さくなります。
まとめ
- 正社員求人7,800件のうち、「ベンチャー企業」のタグが付いた求人は28.9%(2,253件・602社)。タグは企業の自己申告で定義は無い
- 年収の下限はほぼ同じ(500万円と480万円)、上限1,000万円以上は40.7%と25.9%。年収レンジの幅が広い
- 職種を揃えても、14職種中13職種で上限1,000万円以上の割合はベンチャーのほうが高い
- 「残業月20時間未満」はほぼ同じ(54.7%と55.2%)。「ベンチャーは残業が多い」とは求人の条件からは言えない
- 副業可はほぼ2倍、新規立ち上げは3倍以上。ストックオプションは9.4%で、年収の判断には入れない
- 主な勤務地が東京都の求人は85.1%。地方からは選べる数が限られる
副業ができるか、新しい仕事に関われるかといった条件から先に絞り込みたい場合は、条件で求人を絞れるサービスを使うと、会社の規模にこだわらずに候補を並べられます。なお、この形のサービスは登録後に面談があります。
集計は、2026年10月16日にレバテックダイレクトの求人検索に表示された募集中の求人のうち、雇用形態が正社員の7,800件について、求人ごとに表示された職種・年収レンジ・条件のタグを記録したものです。「ベンチャー企業」のタグが付いた求人(2,253件)と、付いていない求人(5,547件)を比べました。職種別の比較は、タグありが30件以上ある14職種で行っています。1社のデータであり、市場全体の比率ではありません。ギークリーの件数は、同じ日に求人検索で確かめたものです。
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エンジニア転職のカジュアル面談の進め方|ベンチャーの選考は、カジュアル面談から始まることもあります。事業の段階や働き方を聞く場として、何を準備するかを扱っています。
出典
- レバテックダイレクト 求人検索(募集中の正社員求人7,800件の職種・年収レンジ・条件のタグ、「ベンチャー企業」のタグで絞り込んだ募集中の求人2,309件・2026年10月16日確認)
- ギークリー 求人検索(「副業可」の条件8,441件・2026年10月16日確認)
- 厚生労働省 裁量労働制の概要(裁量労働制の仕組み・2026年10月16日確認)